上の写真はもう15年以上前の写真です。すでにずいぶんと陽も高くなった時間に、段ボール箱を中心としたゴミが放置されています。まだ、リサイクルということも、今ほどには街に徹底されていなかった頃のことですが、この頃から、巨大な飲食店街であり、また観光地でもある横浜中華街は、ゴミとの闘いの街でもありました。
食の街に
事例:九龍陳列窓
JR石川町駅から中華街への導線にある延平門(中華街西門)。
白虎神が守護神であるこの門をくぐり、最初の四つ角に、中華街及び中国文化に関する情報を発信する展示スペース「九龍陳列窓」があります。
本来は、この展示スペースで中華街などの文化をゆっくり眺めていただき、それから中華料理などをお楽しみいただきたいのですが、この「九龍陳列窓」前の歩道には、横浜市の家庭ごみ収集場所がありました。
しかも、残念なことですが、ごみ出しの日(排出日)は守られない、捨ててはならない事業所から出されたと思われる「事業系ごみ」も堂々と捨てられている。
横浜中華街発展会のメンバーとしては、たいへん恥ずかしいことですが、それこそ「万年ごみ置き場」状態になり、それが長い間にわたって、半ば放置されていたような状態が続いていました。
当然、お客様は、お食事を召し上がる前に、この「ごみ」を目にしなければならないだけでなく、帰り道にもここを通って駅に向かわれるわけです。平気で散乱した「ごみ」を見せ続ける中華街をなんとかしたい。いや、なんとかとないと、お客様にあまりに失礼なことですし、中華街のイメージダウンにも繋がります。もちろん、完全に放置していたわけではないのですが、近隣のみなさんがいくら片づけても、翌日にはもとに戻ってしまう…いたちごっことは、まさにこのことという状態が続いていました。
横浜中華街発展会として定期的に掃除したりはしていましたが、このごみ置き場のごみ収集は行政の仕事です。つまり、横浜市の協力が得られなければ解決には繋がっていかないのです。
そこで、横浜市に地域事情を説明し、討議の結果、このごみ収集場所については廃止という方向で進めていくことになりました。
その間、町方でできることについても粛々と進めながら、横浜市資源循環局中事務所の職員のみなさんにも、収集場の廃止と、その後の収集体制について理解をえるために、周辺の住民のみなさんのお宅を一軒一軒まわっていただきました。また、地域の事情を説明し、中国語でのチラシを配布してもらったりしました。
手続き上、たった1ヶ所の収集場所でも、これを移動したり、廃止したりするのには、やはり、それなりに時間を要します。町内会への説明会などの前段作業だけで1年以上を費やすことになりました。
そして、2008年11月には完全に廃止できるようになり、現在は写真のようなプランターを置いています。ただ、廃止以後も3ヶ月間くらいは、この場所にごみを捨てられていました。でも、行政や周辺住民のみなさんがその度に清掃をしてくださり、現在は全くゴミが捨てられることはなくなりました。
多国籍の街
事例:関帝廟通り 山下町公園前
かつての「居留地135番地」。中華街のはじめの一歩といわれるこの地には、1960年に児童公園として整地された「山下町公園」があります。現在は「會芳亭」と名付けられたあずまやもあり、地域住民だけでなく、観光客のみなさんの休息の場にもなっています。
この山下町公園は、中華街関帝廟通りにありますが、その関帝廟通りは一方通行道路で、歩道も狭い。その狭い舗道上の公園前面に、やはり「ごみ置き場」があります。しかし、ここも残念ながら、ごみ出しのルールはなかなか守られない、捨ててはならない事業所のごみが捨てられていました。とくに、分別が守られておらず、横浜市も分別の守られていないごみは敢えて収集せずに置いていきます。
ごみが狭い歩道を占拠する状態。それでなくとも狭い歩道。観光客のみなさんは、ごみを避けて道路を歩かざるを得ず、歩行の安全を妨げている状態にありました。
このごみ置き場は、一般の住民の方も、多く利用されているので、いかに観光のデメリットといえども廃止にすることはできません。
そこで、2008年12月に写真のような掲示板を設置し、日ごとに収集されるゴミの種類が変わることを明示することにしました。きょうは何のゴミを収集するのかということは「掲示板」の一部を張り替えてお知らせしていますが、その張り替えも近くの中華料理屋さんのご協力で行なっています。
掲示板を設置しても、パーフェクトとはいえない状況ですが、設置から一年、だいぶ効果も表れてきました。中華街という地域性もありますから、外国の方も数多く住まわれています。中国語・韓国語などのチラシを作成するなどして、さらに周知活動を続けていかなければならないと思っています。
集客のための
これだけ情報が氾濫し、あちらこちらの街、ショッピング・モールなどでイベントが行なわれているなかで、果たしてイベントの実施が効果的な集客を導きだすのかという疑問があります。
もちろん、すべてのイベントを否定するわけではありませんが、今日、望むような効果を上げるためには、膨大な予算を必要とするのではないか…あれだけの予算をかけて不評に終わったY150は、集客=イベントという考え方に偏りがちな私たちに、大きな教訓を残してくれたようにも思えます。
仮に、イベントの実施によって、その日の集客を可能にしたとしても、いらっしゃったお客さまに悪印象を与えてしまったり、食事で満足させることができなかったらどうでしょう。効果は半減どころか、逆効果ともいえる結果を招いてしまいます。
それより、中華街は原点に立ち戻って考えてみるべきではないでしょうか。
美味しい食事を提供し、清潔で居心地のよい街をつくり、そして、訪れたお客様に善い印象を持ち帰っていただいて、その噂を、ご近所に、またお友だちに伝えていただく、それこそが実は最も効率的で、大型の予算を必要としない、集約的な振興策になるのではないでしょうか。
街をきれいにすること。確かにこれは地味な上に、毎日の繰り返しですから根気のいる仕事でもあります。しかし、イベント過多の時代が終焉を迎えつつある今、これこそが先駆的な「街づくり」「街の活性化事業」なのではないかと思っています。